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ときどき日記
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[Vol.218/2025年12月] |
十二月の得意先の売り出しにお手伝いに行きました。
この時期は小売り屋さんも上京されることが少なく、当初から積極的な売買は少ないと担当の仕入れ方からも聞いており、それならと、今後製作することが難しくなっている手機や引箔使いのフォーマル物を展覧会のように展示することになりました。
現在の西陣の生産体制は、職人の高齢化と材料の枯渇、技術の継承問題などで水際の状態です。
したがって今までは当たり前のように生産できていた商品が、継続生産することが難しくなっています。特に引箔のような拘った素材は材料となる金相場が三十年前の十倍ほどとなり、
現実の商売アイテムとしての素材としては用いることが現実的ではなくなっています。
また、そのような商材の需要は年々減少しており、その分野に於いては撤退している織屋も少なくはなく、西陣の生産の中でフォーマルかつ高級素材を用いてオーソドックスな生産方法を維持している企業も少なくなり、結果そのような商品も市場に於いて非常に少なくなっています。
よくよく考えれば需要が少ないのですから供給が少なくなるのは当たり前です。どんなものでも需要以上に生産すれば価格が崩れるのは古今東西の経済原則です。
しかしながら、伝統産業である和装は日本の民族衣装であり、その中でも式礼に用いられる礼装は日本の文化と言っても過言ではありません。
また、そのような礼装は安ければ良いというものではありません。 現在の呉服市場に於いては、民芸的な物や作家の作品と言われるような希少性の高い商材は比較的高額商品でも需要はあります。従来の消費者が持っていない商材を売るためには希少性が一番です。
このような環境の中、我が社としては特に素材、技術に拘った商品を数本展示させていただきました。日常の商売には高級すぎるもので、販売にすぐには繋がらなくとも、認めていただける方がいらっしゃると信じて、展示会に臨みました。
結果、数少ない小売り屋さんでしたが、「やっぱり心動かされた」とお買い上げくださる小売り屋さんがいました。本当にありがたく、我が社の想いが通じるのだと改めて実感できる嬉しい瞬間でした。
これからも、我が社の想いを一人でも多くの方にご理解頂けるよう、帯作りに精進してまいります。
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